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コンサルタントのススメ 特別コラム

アビームコンサルティング株式会社
門田 次郎氏 (マネージャー 経営改革セクター)

特別コラム 第3回【「事業仕分け」プロジェクトで学んだこと】

今回は、コンサルタントに転職して2年目に参画した
「事業仕分け(事業ポートフォリオ再構築)」プロジェクトのご紹介をしたい。

ある大手総合商社の事業部は、伝統的なトレードビジネスを主体としており、
メーカー~1次卸~2次卸という零細・複雑なチャネル内に入り込み、口銭で収益を上げていた。

時代背景として、総合商社はトレードビジネス主体から、投資ビジネスに舵を切りつつ、
一方で、「商社"冬の時代"」を経て、企業価値や投資効率を測る経営管理指標や仕組み
を導入し、体質をガラリと変え、活力を取り戻しつつある時期であった。

その事業部でも、経営効率や人員効率を高めるため、儲からない事業は撤退し、
収益性高く、儲かる事業に人員をシフトさせ、大きく成長していく必要性に迫られていた。
凡そ200ものビジネスがあったが、それを「事業仕分け」していく、ということが求められていた。

商社は人にビジネスが付いているため、一つ一つのビジネスには、事業担当者の想い、
将来の成長展望や独自戦略もある。全体視点で見た時に、事業特性の異なる各々のビジネスを
どういう指標で評価して決断を下すか、判断付かない状況にあった。
「共通の評価軸で、同じ土俵で測り、冷徹に見極めをしたい」ということがプロジェクトへの期待であった。

一般的に、事業ポートフォリオ再構築においては、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチが
あるが、今回は商社ビジネス特性を考慮し、「現場の事業担当者の合意を重視」する後者のアプローチを採用した。

まずは各ビジネスを図る評価軸の設計を行った。
「事業価値」という定量的な指標を用いて事業評価することに対して事業担当者から
多数の反対・賛成のご意見や声を戴いた。
「事業部全体としての事業価値や経営効率を最大化するためには重要な取り組みである」
「事業価値といった机上で算出される定量数値だけで、事業の将来性は測れない」
「事業部の全体戦略との兼ね合いや整合性を考慮すべきだ」
「単体では儲かっていないが、この事業が無いと他事業が成り立たない。その価値をどう測るのか」
事業担当者の目線の高さ、立場、損得、思い入れ、業績、経験等から、意見の角度や深さは変わる。

最終的には、「事業価値」「事業効率」といった定量的な評価軸だけではなく、戦略的な事業の重要性、
他事業とのシナジー、グローバル展開との整合など、ビジネスの実態をできる限り捉えつつ、
事業部全体としての方向性も意識した上で、事業担当者一人ひとりが納得できる評価軸を作成した。

その上で、設計した評価軸に基づき、事業評価を行っていった。
弊社プロジェクトメンバーが事業担当者と向き合い、「事業レビュー」を行い、事業の妥当性や
事業計画の検証を行った上で、様々な観点からの評価を行った。

実務を責任持って推進している事業担当者の立場からすれば、
「当事者ではない外部コンサルタントに何故評価されなければならないのか」
「一元的にビジネスを評価し、取捨選択するアプローチはそもそもおかしい」
という、否定的なご意見をお持ちの方もいた。
そのような方には、しっかり想いを汲み取りつつ、事業部全体としての取り組みの意図、
評価軸の意味合いを十分に説明し、ご納得頂き、プロジェクトとしての一体感を醸成していった。
「自らの担当事業だけではなく、事業部全体に視点をシフト頂くこと」が重要であった。

また、事業への思い入れや主観などから、事業環境のトレンドとは、
大きく異なる強気な収益予測をされる方も散見された。
事業価値の過大評価を防ぎ、かつ全事業の評価において公平なる「横串」を指すため、
市場・競合・打ち手等から、合理的な数字なのか否かを見極め、現実的な数値に修正して頂いた。
その際、事業担当者はその業界、その事業のプロであり、特有の知見をお持ちであるため、
第三者であるコンサルタントは、ファクトとロジックで対抗していかなければならない。
緊迫感あるミーティングが連日続いた。

最後に、決断の意思決定。
各事業を共通土俵上に並べ、事業担当者全員で同じテーブルに座り、
優先順位をどうすべきか、どこを取捨選択の基準にするか、
基準ギリギリにある事業をどうすべきか、真剣に議論し合う。
全体で合意形成を行った上で、強化・撤退の意思決定を行った。

事業担当者間で議論が分かれ、膠着状況に陥った時、事業部トップの出番である。
長い間、第一線で鍛え抜かれたビジネス感度、洞察、判断力を基に、
ズバズバと鋭く意見を言い、決断を下し、前に進めていく。これがこの会社の強さ、と実感した。

最終の意思決定はやはりお客様側にして頂かなければならない。
コンサルタントは意思決定の「サポート」に全力を尽くす「黒子」であり「参謀」、
ということも改めて肌で理解できた。

このプロジェクトを通じて、大きく3つ学んだ。

①事業には、様々な背景や文脈があり、様々な立場、想い、意図を持った人により動かされており、
  それを広く・深く理解をしながらも、同時に冷静に俯瞰できる視点が必要である、ということ

②コンサルタントの仕事は、お客様のビジネスの意思決定をするための判断材料を作る、
 非常に緊迫感と責任と刺激ある仕事であり、その過程で大きく成長させられる、ということ 

③ロジックや(事業価値といった)定量的な数値は意思決定を支える強力な道具ではあるが、
  最終的には人間の”読み”・洞察や決意・決断が、最終的な意思決定に至らしめる、ということ

また、人間対人間の真剣勝負であるため、長期間、密度濃く一緒に仕事をしていく中で、
様々な関係性が生まれる。
当初、対立体制にあっても、お互いの思い、腹を割って検討を進めていくことで
信頼関係や戦友関係のようなものも生じ得るということも知った。
プロジェクト最後に、ある事業担当者の方に「ウチに来て、仕事を一緒にやらないか」と
仰って頂けたことは、今でも忘れられない。

尚、当該プロジェクトは「実行フェーズ」や「他事業部への横展開」の支援といった形で
引き続き、弊社はご支援機会を戴き、その後も長いお付き合いをさせて頂くことになった。
コンサルティングのプロジェクトは、期間が限定されているものの、
長い、長い企業経営の旅路において、一大変革を起こすものである。
そこでお客様と共に作り上げた「変革」はずっと企業内に息づくし、
また、必要となれば、お声がかかり、再びご支援の機会を戴けるものである。
今後も、お客様とはそのような長いお付き合いをさせて頂きたい、と考えている。

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