特別コラム 第3回【風をよむ】
12月半ば、横浜で初霜・初氷を観測した日に、江ノ島へ行った。
アビームでは社内活動としていくつか部活があり、私はヨット部に所属している。
(オリンピックを目指すTeam ABeamとは別の同好会組織で、江ノ島を拠点に1~2人乗りの“ディンギー”を練習している。)
ヨット艇を覆う保護用のブルーシートに氷が張っていたことに怯え、忘年会の勢いで練習会に参加表明したことを強く後悔しながら海に出ると、穏やかで微風。少し沖に出ると、気持ちの良い風が吹いている。絶好のヨット日和だった。
ヨットにエンジンはなく、風を動力として(帆に風を受け、揚力を発生させることによって)進む。
走らせ方には、目的地が風上方向の場合と、そうでない場合の二種類がある。
目的地が風上方向でない場合は、艇を目的の方向に向け、保つよう調節すれば目的地に着く。
一方、目的地が風上にある場合、方向転換を行いながらジグザグに走る(ヨットは、風上方向を0度として、前方約45度以上風上に向かっては走れないため)。
方向転換の際、艇が大きく傾くリスクがあるため、回転しすぎたり、 回転の途中で止まったりしないように、艇の向きを正しくコントロールすることが大切である。 風速、艇速、波の状態によって、動作タイミングは異なり、このときが、もっとも沈(=転覆)する危険が大きい。タイミングやコントロール方法を誤ると、沈して遅れをとるばかりか、心身ともに大きなダメージを受ける。
私自身は海の上でふわふわ浮いて、きれいな景色を眺めるお遊び程度だが、本来のレースは違う。
ヨットレースの基本戦略は、風の角度や周期を読んで、それに合わせて帆走すること。また、目的地に向かって最短のコースが最善のコースとは限らない。ヨットレースは単純にスピードだけでなく、有利な風を見つけるセンスや、戦術なども必要とされる。
目的地へ最も効率的に辿り着く方法をいかに見出せるか、目的地に向かって進みつつ、いかに有利な風を見つけてスピードに変えられるか、常に周囲を見渡して情報を集め、取りうる選択肢の優劣をいかに瞬時に判断し、方向転換のタイミングを図り、いかにうまく実現できるか。
今、私が関わっているプロジェクトは、全体としての期間は非常に長く、トータルで数年間にも渡るものだ。現在は「次期中期経営期間を開始する」というひとつの目標に向かって、2年以上をかけて準備を進めている。
通常のプロジェクトは2~3ヶ月であり、期間中のタスク・スケジュールはウィークリー/デイリーベースで定め、大きく見直すことはあまりない。しかし、今のプロジェクトでは、次の目標に向け、マイルストンを見直し、タスクの進め方や順序をある程度臨機応変に変えることを求められる(もちろんスコープ管理は行った上で)。
ただ、短いプロジェクトでも、クライアントの興味関心、気になっている点を感じ取り、他チームの検討状況等、環境の変化を踏まえて、適切なタイミングで舵を切り直し、細かく調整するという点は同じ。
興味関心や状況は移り変わる。タイミングを外したり、やり方を間違ったりすると、クライアントには響かない。早すぎると、重要性がうまく伝わらず、“要らないもの”と判断されたり、結論が先送りになったりする。遅すぎたり、適切でないやり方をしたりすると、時間をかけた作業が無駄になるばかりか、不信感まで与えてしまうこともある。
また、伝え方としても、クライアントが何に興味を持つか、どのようなステップで理解して、ものを考えるかを意識し、構成や表現を考えぬかなければいけない。
クライアントがそれぞれの立場で考えることや欲しいものをきちんとキャッチし、環境の変化を踏まえたうえで、単に行きたい方へ流されるのではなく、必要な方向へうまく導いていく。大きな風や波に煽られながらも、目的地に向かって一緒に進んでいる実感を得られるというのは、この仕事の面白さのひとつだ。











